【入院体験から学んだ】心の舵を自分に取り戻す方法

入院生活に訪れた「静かな時間」

今回の入院は、私にとって治療を超えた意味を持つものでした。
ステロイドパルス療法という治療は、
1日1回1時間、点滴の時間だけ体を拘束されます。
それ以外の時間は病棟内を自由に過ごせるため、
廊下のテーブル席でパソコンを開いたり、
読書をしたり、時にはただ窓の外の空を眺めるだけの時間もありました。

病棟外には出られない制約があります。
けれど、その枠の中にいるからこそ、
「この範囲でどう生きるか」を選べる。
完全な自由はなくても、残された選択肢は必ずある。
そのことを改めて実感できる日々でした。

夜中のいびきが教えてくれたこと

入院初日の夜、私は同室の患者さんのいびきに悩まされました。
定期的に呼吸が止まり、次に響くのは怪獣のような大音量。
最初はノイズキャンセリングイヤホンでしのいでいましたが、
深夜には電池が切れ、眠れぬまま時間だけが過ぎていきました。

「寝たいのに眠れない」──その状況に執着するほど、イライラは募ります。
しかし、明け方に本を手に取り、思い切って廊下へ出た瞬間、
気持ちは不思議と軽くなっていました。

外はうっすらと明るみ始め、ナースコールや看護師の声が飛び交う廊下も
決して静かではありません。けれど、行動を変えたことで気分は整い、
「イライラに支配される自分」から抜け出すことができていたのです。

この体験は、
「環境を変えられなくても、自分の行動を変えることで気分は変えられる」という
自己統治の真髄を改めて教えてくれました。

気分は「相手」ではなく「自分」で決める

あの夜、私は痛感しました。
イライラの原因は「相手のいびき」そのものではなく、
我慢し続けてその場に留まっていた自分にあったのだと。

他人の言動や環境は変えられません。しかし、自分の行動は選べます。
これは仕事や家庭、人間関係にも当てはまります。

・上司の指示に納得できないとき
・家族の言葉に傷ついたとき
・思い通りに進まない状況に立たされたとき

相手を変えようと躍起になるよりも、
自分の行動を変える方がはるかに健全で、
実際に気分は変えられるのです。

「できない」ではなく「できた」に光を当てる

入院生活を通じて、もうひとつ強く意識したのは
「できない」にとらわれすぎないことでした。

人はつい「できなかったこと」「失敗したこと」にばかり目を向けがちです。
けれど実際には、朝起きた、食事をした、誰かと挨拶を交わした──
一日の中には数えきれないほどの「できた」が存在します。

それを「当たり前」と片付けるのではなく、
ひとつひとつを「できた」として数えていく。
この小さな積み重ねが、自分を支える力になります。

人生イベントが教えてくれたこと

思い返せば、この15年は大きな出来事の連続でした。
結婚、父の死、娘の誕生、公務員への転職、胆嚢摘出、
うつ病による休職と復職、離婚、扁桃腺摘出、異動、再びのうつ、
退職、そして「ここのば」の開業。

次から次へと押し寄せる出来事に、
何度も「もう無理だ」と思ったことがあります。
けれど、乗り越えた後に残ったのは「できなかった自分」ではなく、
「できてきたことの積み重ね」でした。

今回の入院は、そんな自分の歩みをゆったりと振り返り、
「私はすでに素晴らしい」という基本姿勢を再確認する時間になりました。

自己統治とは「心の舵を握ること」

自己統治理論では、
「問題を問題にしない」「変えられないものに心を支配されない」
これらを大切にします。

それは「何も感じないようにする」ということではなく、
感じた上で「自分はどう舵を切るか」を選ぶことです。

イライラしてもいい、不安になってもいい。
ただし、その気持ちに流され続けるのか、
行動を変えて気分を整えるのかは自分次第。

人生のハンドルを誰かに握らせるのではなく、自分が握り直す。
これが自己統治の実践です。

病室の窓から見た夕暮れの空

病室の窓から眺める夕暮れの空は、日ごとに色を変えていました。
橙から紫、そして藍へと移りゆくその景色を見ていると、
「変わらないように見えるものも、実は刻一刻と変化している」
そのことを思い出させてくれます。

同じように、私たち自身も日々小さな変化を繰り返しています。
昨日までできなかったことが今日できるようになる。
苦しみの中にも、新しい視点が芽生える瞬間がある。

そのことに気づけるかどうかで、人生の見え方は大きく変わります。

まとめ|誰もが舵を握り直せる

今回の入院で改めて実感しました。
私たちは環境や他人に翻弄されがちですが、
最終的に心の舵を握るのは自分自身です。

・変えられないものに執着せず、自分の行動を選ぶ
・「できない」ではなく「できた」に光を当てる
・揺れる心を否定せず、そこからどう舵を切るかを選ぶ

その積み重ねが、心を落ち着かせ、自分らしく生きる力を育てます。

そしてその力は、誰もがすでに持っているものなのです。

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