夏休み明けの不安と不登校〜逃げることは前進、兆しに向かって〜
はじめに
夏休みが終わりに近づくと、多くの子どもたちの心は揺れ始めます。
「学校に行きたくない」
「またあの子に会いたくない」
「勉強についていける自信がない」
こうした言葉は決して珍しいものではなく、子どもたちの胸の奥にある本音です。
一方で「友達に会うのが楽しみ」「新しい学期を頑張りたい」と、
期待を胸に抱いている子もいます。
つまり夏休み明けの心模様は実に多様であり、一人ひとり違って当然なのです。
そこに正解や不正解はなく、
「学校に行きたい」も「行きたくない」も、
どちらも子どもの本当の気持ちであり、尊重されるべき大切な感情です。
しかし社会や大人の目は、どうしても
「学校は行って当たり前」という価値観に支配されています。
だからこそ不登校や登校しぶりの子どもは、
「普通じゃない自分」「親を困らせている自分」を責め、
苦しみを深めてしまうのです。
「自分はダメな子なんじゃないか」
「生きている意味があるのかな」
そんなふうに考え込んでしまう子も少なくありません。
私は声を大にして伝えたいのです。
不登校はわがままではなく、心と体が発しているSOS。
命を守るための、自然で健全な反応なのだということを。
子どもへのメッセージ
今、不安でいっぱいになっている子どもたちへ。
まず、あなたが「行きたくない」と思うことは自然な反応です。
人は安心できる場所にいたいと願うものです。
学校が今のあなたにとって安心できる場ではないなら、
心や体が「行きたくない」と訴えるのは当然のことです。
夏休み明けになると、腹痛、頭痛、だるさ、眠れないといった
体の不調を訴える子が多くなります。
これは仮病でも怠けでもありません。
心の不安が体に現れることはよくあります。
むしろ体が「ストップをかけて」あなたを守ろうとしているサインなのです。
そしてどうか忘れないでください。
学校に行けなくても、あなたの価値は1ミリも下がりません。
あなたは生きているだけで100点。最低点が100点。人生は加点方式。
つまり学校に行けなくても点数が減ることはなく、
むしろ「生きている」ということ自体がすでに100点満点なのです。
「みんな行っているのに、自分だけ行けない」と比べてしまうこともあるでしょう。
でも、人はそれぞれ違う歩幅で歩いています。
あなたの歩幅はあなたのものです。
無理に合わせなくていいし、立ち止まってもいい。
今は休むことが必要なときかもしれません。
そして大切なことをもうひとつ。
「逃げる」という字は「兆」と「しんにょう」でできています。
これは「兆しに向かって進む」という意味を持ちます。
逃げることは後退ではありません。未来に向かって進むための行動です。
自分を守るために学校から逃げることは、
勇気ある選択であり、新しい未来への兆しです。
だから、どうか自分を責めないでください。
あなたは弱いのではなく、自分を守ろうとしている強さを持っているのです。
安心できる環境に身を置くこと、それがあなたにとっての前進です。
私自身の思い
私は精神保健福祉士・公認心理師として、不登校や心の不調に悩む
多くの子どもと関わってきました。
病院や行政の現場、教育や就労支援の現場など、
15年以上にわたり支援を続けてきました。
しかし私は単なる支援者ではありません。
私自身もうつ病を経験した当事者でもあります。
心が限界を超え、布団から起き上がることもできなくなった日々。
「頑張らなきゃ」と無理を続けた結果、体も心も壊れていった経験。
そこから学んだのは、
「頑張ることが必ずしも正解ではない」ということでした。
逃げること、休むことは、命を守るために必要な選択です。
休むことでしか見えてこない景色があります。
一度止まることで、初めて未来に進む力が湧いてくることがあります。
だからこそ私は、不登校の子どもたちに
「あなたは間違っていない」と伝えたいのです。
学校から逃げることは後退ではなく、
未来に向かって歩き出すための大切な一歩です。
もし今、あなたが苦しくてたまらないのなら――
どうか一人で抱え込まないでください。
勇気を出して、信頼できる大人に伝えてください。
そして、もし身近に話せる相手がいなければ、私にメッセージを送ってください。
私はあなたの味方です。
どんなあなたであっても、価値は1ミリも減りません。
あなたの選択を尊重し、「どんなあなたでも大丈夫」と伝え続けます。
おわりに
夏休み明け、不安や体調不良を訴える子どもは少なくありません。
不登校は「弱さ」や「逃げ」ではなく、
心が必死に自分を守ろうとする自然な防御反応です。
子どもに伝えたいのは、
あなたはすでに素晴らしい。生きているだけで100点。凸凹のまま100%。
そして親や大人に伝えたいのは、
条件付きではなく「どんなあなたでも大丈夫」という無条件の愛情こそが、
子どもの未来を大きく変えるということです。
学校に行ける子も、行けない子も、どちらも等しく尊い存在です。
「逃げる」という行動は「兆しに向かって進む」こと。
どうか安心して、自分の命と心を守る選択をしてください。
未来は必ずひらけていきます。
私はその兆しを信じています。
そして、あなた自身がその兆しを見つけられるように、
いつでも味方であり続けます。
命よりも大切なものなんてないっ!!
何よりも「自分」を一番大切に。
勉強する、学ぶ場所はなにも「学校」だけじゃない!
苦しいなら、逃げることを頑張れっ!
あなたは、大丈夫だよ。