不登校とSNS・ゲーム依存
〜孤立からの逃避ではなく、自分の選択を取り戻すために〜
はじめに
不登校の子どもや若者がSNSやゲームにのめり込む姿を、親や支援者は心配そうに見つめています。
「このままで大丈夫だろうか」
「学校に行かないうえにゲームばかり…」
そう思うのは自然なことです。
しかし、SNSやゲームは「悪者」なのでしょうか?
私は精神保健福祉士として精神科領域で15年、公認心理師として3年の相談経験を重ね、うつ病当事者でもある立場から、たくさんの不登校の子どもと出会ってきました。その中で気づいたのは――
SNSやゲームは単なる依存ではなく、彼らなりの「居場所」や「回復の手がかり」でもあるということです。
この記事では、不登校とSNS・ゲーム依存の関係を整理しながら、親・支援者がどう関わればいいか、そして本人がどう「自分の選択」を取り戻していけるかを考えます。
不登校とSNS・ゲームの関係
不登校が生まれる背景
不登校は「怠け」や「わがまま」ではありません。学校での人間関係、学習の困難、発達特性、家庭環境、心の不調――さまざまな要因が複雑に絡み合って起こります。
学校に行けなくなると、日常のリズムや社会との接点が失われ、孤立感が強まります。
SNS・ゲームが果たす役割
そんな中でSNSやゲームは、彼らにとって「安心して繋がれる居場所」になります。
- SNS → 承認欲求を満たす、同じ悩みを共有できる仲間を見つけられる
- ゲーム → 現実よりも簡単に成果を得られる、役割や居場所を持てる
これは一方的に否定できない側面です。社会との接点が途切れた子どもにとって、SNSやゲームは命綱であることも多いのです。
「依存」とは何か?
「依存」という言葉にはネガティブな響きがあります。
しかし臨床的には、「それがないと生活が回らない状態」を指します。
では、不登校の子どもにとってSNSやゲームはどうでしょう?
- 友達との会話はSNSが中心
- 一日の生活リズムはゲームを軸に動いている
- 現実よりもオンラインの方が安心できる
この場合、それは「依存」でもあり、「必要な居場所」でもあります。大切なのは、それが心を支える機能を果たしているのか、それとも生活を壊してしまっているのかを見極めることです。
親や支援者がやりがちな誤解
1. 「ゲームやSNSを取り上げれば学校に行く」
これは最も多い誤解です。取り上げても不登校は改善しません。むしろ孤立を深め、信頼関係が壊れるリスクが高いです。
2. 「制限すれば解決する」
時間制限はある程度必要ですが、強制的に「1日30分」と決めるだけでは意味がありません。本人が納得していない制限は反発や隠れ利用につながります。
3. 「SNSやゲームは悪いものだ」
現代の子どもにとって、SNSやゲームは社会の一部です。学校に行かなくても、そこで人との関わりや達成感を得ているのです。
本人が「自分の選択」を取り戻すために
1. 生活リズムの再構築
夜型の生活は不調を悪化させやすいです。
まずは「昼夜逆転を少しずつ戻す」ことから始めましょう。ゲームやSNSを完全否定せず、「昼間に活動するエネルギーを残す」工夫を一緒に考えることが大切です。
2. 「やめる」より「上手に使う」
依存状態の子どもに「やめろ」と言っても逆効果です。
大事なのは「どのように使うか」を本人が選べるようになることです。
- ゲームの合間に5分散歩する
- SNSを夜中ではなく昼間に使う
- 1日の中で“自分の時間”をSNSやゲーム以外にも少し作る
3. 自己肯定感の回復
不登校の子どもは「学校に行けない自分」を責めています。
「生きてるだけで100点」「あなたはすでに素晴らしい」――ここのばの理念を伝えることで、子どもが「ゲームばかりしている自分」も受け入れやすくなります。
4. 小さな成功体験を積む
ゲームでは簡単に達成感を得られますが、現実でも小さな「できた」を積み重ねることが重要です。
- 洗濯物をたたむ
- 家族と一緒にご飯を食べる
- 朝にカーテンを開ける
こうした行動を「すごいね」と認めてあげることで、現実世界での自信も少しずつ回復します。
支援者としてのスタンス
私は支援の現場で、「こうすればいい」と指示するよりも、「私はこうして回復した」という事実を伝えることを大切にしてきました。
なぜなら、変わるかどうかは本人が決めることだからです。
ここのばでは、
- ゲームを続けるかやめるか
- SNSをどう使うか
- 学校に戻るか戻らないか
そのすべては「あなたが選んでいい」と伝えています。
私たちはただ、「選択肢を広げる」情報と伴走を提供するだけです。
まとめ
- 不登校とSNS・ゲーム依存は切り離せない関係にある
- SNSやゲームは依存であると同時に居場所でもある
- 親や支援者は「取り上げれば解決する」という誤解を持たない
- 大切なのは「やめる」ことではなく「上手に使う」こと
- 回復の核心は、本人が「自分の選択」を取り戻すこと
おわりに
「ゲームばかりしていて大丈夫?」
「SNSに依存していて心配…」
そう感じるのは自然なことです。
けれど、本人にとってはそれが今の居場所かもしれません。
まずは「生きてるだけで100点」という視点で受け止め、そこから少しずつ「自分の選択」を取り戻すサポートをしていきましょう。
あなたの子どもも、そしてあなた自身も、すでに十分に素晴らしいのです。