心理・福祉コラム

子どもが「学校に行きたくない」と言ったら|親が「行かせる・休ませる」の前に整理したいこと

朝、出かける時間が近づいたところで、子どもから、

「学校に行きたくない」

と言われる。

そんなとき、親の頭にはいろいろなことが浮かびます。

「今日は休ませた方がいい?」
「ここで休ませたら、もっと行けなくならない?」
「何か学校であったの?」
「親として、どうしたらいい?」

その日の朝に判断しなければならないこともあるため、焦るのは自然なことです。

ただ、「行かせるか、休ませるか」を決めることと、子どもに今何が起きているのかを理解することは、少し別の話です。

学校に行きたくないという言葉が出たとき、一つの正解を急いで探すより、まず状況をいくつかに分けてみることから始めてもよいかもしれません。

「学校に行きたくない」だけでは、理由は一つに決まりません

学校へ行きたくない理由というと、

「友達とうまくいっていないのかな」

「勉強についていけないのかな」

「いじめられているのでは」

など、何か一つの原因を探したくなるかもしれません。

けれど、実際には一つの理由だけで説明できない場合があります。

文部科学省も、不登校について、心理的・情緒的なことだけでなく、身体的なことや社会的な背景など、さまざまな要因が関係し得る状態として整理しています。

たとえば、

学校での人間関係が少し気になっている。
最近よく眠れていない。
授業についていくことに疲れている。
教室の音や人の多さで消耗する。
新学期になって環境が変わった。
家に帰るとぐったりしている。

こうした小さな負担が重なって、「学校に行きたくない」という一言になっていることもあります。

ですから、

「原因は何?」

と一つに絞るより、

「今、この子にはどんな負担が重なっているのだろう?」

と考える方が、見えてくることがあります。

まず、「行く・行かない」以外の様子も見てみる

その朝に学校へ行くかどうかだけを見ていると、子どもの変化を見落としてしまうことがあります。

少し視野を広げてみます。

睡眠はどうでしょう。
食欲は変わっていないでしょうか。
頭痛や腹痛、だるさはないでしょうか。
家では以前と同じように過ごせていますか。
友達や学校の話をしたときの反応はどうでしょう。
ここ最近、何か環境の変化はなかったでしょうか。

厚生労働省も、子どもの心のSOSは、睡眠・食欲・体調・行動などの変化として現れることがあるとしています。
一方で、学校へ行きたがらないという一つのサインだけで、心の病気だと決められるわけではありません。

大事なのは、

「学校へ行けたか」だけでなく、「いつもと何が違うか」を見ること

です。

理由を聞くことより、「話せる余地」を残す

親としては、

「どうして行きたくないの?」

と聞きたくなると思います。

聞くこと自体が悪いわけではありません。

ただ、子ども自身も理由をうまく言葉にできていなかったり、いくつかのことが重なっていたりする場合があります。

そんなときに答えを急がせると、

「理由を説明できないなら学校へ行かなければならない」

という話になってしまうことがあります。

「何があったの?」と何度も問いかけるより、

「今日はしんどそうに見えるよ」
「今は話したくなければ、あとでもいいよ」

くらいの余地を残すことも一つの方法です。

厚生労働省も、子どもの話を聞く際には、大人側の「こうすべき」という考えをいったん脇に置き、まず子どもの気持ちを受け止めることを紹介しています。

「休ませる=解決」でも、「行かせる=解決」でもありません

ここが、保護者にとって一番迷いやすいところかもしれません。

学校を休ませれば、それで全部よいわけではありません。

反対に、登校できれば、それですべて解決したとも限りません。

文部科学省は、不登校支援について「学校に登校する」という結果だけを目標にせず、子どもが自分の進路を主体的に考え、社会的な自立につながる支援を行う必要があるとしています。また、不登校の時期が休養などの意味を持つ場合がある一方、学習や進路への影響にも目を向ける必要があるとしています。

つまり、

「絶対に行かせる」
「ずっと休ませる」

と最初から決めるのではなく、

今の状態を見ながら、その都度考えていく

ことが必要になります。

親にできることと、親だけでは担わなくてよいこと

子どもが学校へ行けなくなると、

「自分が何とかしなければ」

と思う保護者もいます。

もちろん、家庭だから気づけることがあります。

一方で、親がすべてを背負う必要はありません。

親にできるのは、子どもの状態を見たり、話を聞いたり、学校に家庭での様子を伝えたり、必要な支援につながったりすることです。

しかし、

学校で起きている問題を家庭だけで解決すること。
子どもを毎朝必ず登校させること。
原因を親が特定すること。
医療的な判断を親だけですること。

までを、すべて保護者の責任にする必要はありません。

学校、スクールカウンセラー、教育相談、医療機関など、それぞれに担えることがあります。

支えることと、全部を背負うことは同じではありません。

相談は「不登校になってから」でなくてもよい

「まだ数日しか休んでいないから、相談するほどではない」

と感じることもあるかもしれません。

けれど、相談は診断をつけたり、「不登校です」と決めたりするためだけのものではありません。

「最近、朝になるとしんどそう」
「理由を聞いてもよく分からない」
「親としてどう関わればいいのか迷っている」

という段階で、状況を整理するために使うこともできます。

たとえば名古屋市では、不登校や登校しぶりについて学校の先生やスクールカウンセラーに相談できるほか、「ハートフレンドなごや」などの相談窓口も案内しています。名古屋市も、不登校にはさまざまな要因があり、登校だけを支援のゴールにしない考え方を示しています。

また、睡眠や食欲、体調、行動などにこれまでと大きく違う変化が続く場合や、心身の状態が強く心配される場合には、医療機関など専門家への相談も選択肢になります。

「この子をどう学校へ戻すか」の前に

子どもから「学校に行きたくない」と言われると、親も先のことまで考えてしまいます。

でも、一度に全部を決めなくても構いません。

まず考えてみたいのは、

「この子に今、何が起きているのだろう?」

ということです。

そしてもう一つ。

「子どもが向き合うことと、親である自分が背負っていることは、どこまで同じだろう?」

と分けてみることです。

学校へ行けないことだけを変えようとするのではなく、心の状態、これまでの経験や特性、人間関係、暮らしや学校環境などを少しずつ整理していく。

そこから、その子と家族に合う次の一歩が見えてくることがあります。

一人で整理することが難しいと感じるときは、誰かと一緒に整理する方法もあります。

ここのばの初回相談では、「学校へ行かせる方法」を一方的に決めるのではなく、今起きていることや背景、本人・家族・学校などそれぞれができることを一緒に整理していきます。

まだ相談までは考えていない場合は、安心ライブラリーなどで不登校について知るところから始めても構いません。


心理・福祉コラム一覧へ

トップへ戻る