心理・福祉コラム

「明日は学校に行く」と言ったのに、朝になると行けない

親が「約束したでしょ」と言う前に整理したいこと

日曜日の夜。

子どもから、

「明日は学校に行く」

という言葉を聞いた。

少しほっとした保護者もいるでしょう。

ところが月曜日の朝。

時間になっても起きてこない。

起きても支度が進まない。

「やっぱり今日は行けない」

と言う。

そんな朝を迎えると、

「昨日、行くって言ったよね?」

「どうして急に変わるの?」

「行くつもりがないなら、最初からそう言ってほしかった」

と思う保護者もいます。

期待していた分、がっかりしたり、腹が立ったりするのも不思議ではありません。

先に全体像をお伝えすると、

前の晩に「行こう」と思ったことと、朝になって実際に動ける状態であることは、同じではありません。

「行くと言ったのに行かなかった」

という約束の問題だけで考えるより、

前夜の気持ちと
朝の心身の状態

を分けてみると、何が起きているのかを整理しやすくなります。

「行く」と言った気持ちまで、嘘だったとは限りません

前日の夜には、

「明日は行きたい」

「今度こそ行こう」

と思っていたのかもしれません。

友だちに会いたい。

授業に遅れたくない。

家族を安心させたい。

このまま休み続けるのは不安。

いろいろな気持ちが重なって、「明日は行く」という言葉になっていることがあります。

ところが朝になると、

身体が重い。

頭やお腹が痛い。

学校のことを考えると不安が強くなる。

玄関へ近づくほど動きにくくなる。

という状態になる子どももいます。

厚生労働省は、子どものこころのSOSが、睡眠・食欲・体調・行動などに表れることがあり、「朝、起きるのがつらそう」「なかなか起きられない」といった変化も確認したいサインとして挙げています。厚生労働省

だから、

「昨日の言葉は嘘だった」

とすぐに決める必要はありません。

昨日は昨日の状態で「行こう」と思っていた。

今朝は今朝の状態で「動けない」。

その両方が、その時点では本当だった可能性があります。

今回分けたいのは、「意思」と「できる状態」

今回の記事での小さな整理は一つです。

「行きたい・行こう」という意思と、
「今、実際に行ける心身の状態」

を分けます。

たとえば、

「学校には行きたい」

と思っていても、

眠れていない。

朝になると腹痛が出る。

教室へ入る場面を考えると緊張が強くなる。

人間関係で気になることがある。

授業についていけるか不安。

という状態なら、気持ちだけでは身体が動かないことがあります。

これは、

「本人の意思が弱い」

と決める話ではありません。

一方で、

「本人は行きたいと言っているから、必ず登校させる」

と考える必要もありません。

行きたい気持ちを尊重することと、その日の状態を見ることは両立します。

朝に「昨日、約束したよね」と迫ると何が起きる?

保護者からすると、

「行くと言ったのだから、少しは頑張ってほしい」

と思うこともあるでしょう。

ただ、朝すでに動けなくなっている子どもに、

「昨日言ったでしょ」

「約束したよね」

と確認を重ねても、身体が動けるようになるとは限りません。

むしろ、

「行けない自分はダメだ」

「親をまたがっかりさせた」

という負担が加わる場合もあります。

文部科学省は、不登校を「問題行動」と受け取らないよう配慮し、本人の意思を十分に尊重しながら、本人や保護者を追い詰めない支援を基本的な考え方として示しています。文部科学省

もちろん、これは、

何も確認しない。

学校の話を一切しない。

という意味ではありません。

朝に必要なのは、約束を確認することより、その日の状態を確認すること

と考えると分かりやすくなります。

朝は「行く?行かない?」だけにしない

朝の時間は限られています。

学校への連絡。

親の出勤。

きょうだいの準備。

いろいろ重なるため、

「で、今日は行くの? 行かないの?」

と結論を求めたくなります。

でも、選択肢は二つだけとは限りません。

学校と相談できる状況であれば、

少し遅れて行く。

一時間目は休む。

別室や保健室を利用する。

今日は休み、次の日について改めて考える。

放課後に先生と話す。

といった選択肢が使える場合もあります。

実際に使える方法は、学校や子どもの状態によって違います。

大事なのは、

その朝だけで「これから学校へ行ける子か、行けない子か」を決めなくてよい

ということです。

「なぜ行けないの?」の答えが出ないこともある

保護者としては、理由が分かれば対応しやすくなります。

だから、

「何が嫌なの?」

「友だち?」

「先生?」

「勉強?」

と聞きたくなるでしょう。

ただ、子ども自身にも、

「分からない」

という場合があります。

学校で一つ大きな出来事があったのではなく、

疲れ。

人間関係。

授業。

音や人の多さ。

失敗への不安。

生活リズム。

いくつかの負担が少しずつ重なっていることもあります。

その場合、

一つの「原因」を答えること自体が難しくなります。

そんなときは、

「なんで行けないの?」

だけではなく、

「朝は身体、どんな感じ?」

「学校の中で、一番しんどそうなのはどの時間?」

「行くとしたら、何が少し変わると行きやすそう?」

と、困っている場面を小さくする方法があります。

「行けたかどうか」以外にも見るものがあります

不登校や登校しぶりが続くと、

今日行けた。

今日も行けなかった。

という結果が大きく見えます。

でも、状態を理解するためには、それ以外の変化も手がかりになります。

眠れているか。

食事は取れているか。

昼間の活動量はどうか。

家では少し話せるか。

好きなことは楽しめているか。

学校の話題への反応はどうか。

頭痛や腹痛などが続いていないか。

厚生労働省も、子どものSOSについて、睡眠・食欲・体調・行動など「いつもと違う」変化を見ることを勧めています。厚生労働省

つまり、

登校できたかどうかだけで、回復や悪化を判断しない

という見方もできます。

身体症状が続くなら、「学校の問題」だけにしない

朝になると、

頭が痛い。

お腹が痛い。

めまいがする。

強くだるい。

起き上がれない。

こうした状態が繰り返されている場合には、

「学校が嫌だから」

だけで説明しない方がよいこともあります。

厚生労働省も、子どものつらい症状が続いている場合には専門家への相談を勧めています。厚生労働省

小児科などの医療機関。

学校のスクールカウンセラー。

教育相談。

保健センター。

などから情報を得る方法があります。

どこへ相談すればよいか分からなければ、公的な相談窓口から相談先を一緒に考えることもできます。厚生労働省は、教育センターや保健所・保健センター、精神保健福祉センターなど、子どもの状態に応じた相談先を案内しています。厚生労働省

親が期待してしまったことも、責めなくていい

子どもが、

「明日は行く」

と言った。

それを聞いて、

「明日は行けるかもしれない」

と思った。

これは自然な反応です。

だから翌朝行けなかったときに、

がっかりする。

腹が立つ。

仕事の調整を考えて焦る。

という保護者の気持ちまで否定する必要はありません。

ただ、

親が期待したことと、
子どもが約束を破ったこと

も同じではありません。

期待した自分を責める必要もなければ、その期待を子どもに全部背負わせる必要もありません。

子どもの状態を見ることと、

保護者自身の予定や負担を整理すること。

両方が必要です。

「明日は行く」と言われた夜にできること

子どもから、

「明日は行く」

と言われたら、

「じゃあ絶対ね」

と約束にするより、

「行こうと思ってるんだね」

と、その時点の気持ちとして受け取る方法があります。

そのうえで、

「朝しんどかったら、そのときまた考えよう」

「遅れて行く方法もあるか、学校に聞いておこうか」

など、次の日の状態に応じて選び直せる余地を残しておく。

決めたことを守ることだけを自己決定にしない。

状態が変わったら、

保留する。

変更する。

別の方法を選ぶ。

ということも含めて、自分で選ぶことです。

月曜日の朝、まず分けてみる

昨夜、

「明日は行く」

と言った。

今朝、

「行けない」

と言っている。

そんなときは、

昨日の気持ちと
今日の状態

を、まず分けてみます。

昨日「行きたい」と思った気持ちを否定しない。

今日動けない状態も無視しない。

そして、

本人が今できること。

家族ができること。

学校と相談すること。

医療や相談機関に任せてもよいこと。

を少しずつ分けていく。

「行くと言ったのに行けなかった」

だけで、その子の意思や頑張りまで評価する必要はありません。

約束を守れたかどうかより、今どこで動けなくなっているのか。

そこが分かると、次に考えることも少し具体的になります。

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