
家族が元気がないとき、どう声をかける?
「励ます・そっとする」の前に整理したいこと
土曜日の夕方。
家族で過ごしているのに、いつもより会話が少ない。
食事には来たけれど、すぐ部屋へ戻る。
「疲れた」と言って、横になっている時間が増えた。
そんな様子を見て、
「何かあったのかな」
「声をかけた方がいい?」
「そっとしておいた方がいい?」
と迷っている人もいるかもしれません。
心配だからこそ、
「元気出して」
「気分転換に出かけよう」
「何があったの? 話して」
と、何かしてあげたくなることもあります。
先に全体像をお伝えすると、家族の元気がないときに家族が担うのは、原因を言い当てたり、元気に戻したりすることではありません。
まずは、
変化に気づく。
話せる余地をつくる。
必要なら相談につなぐ。
そして、家族だけで全部を背負わない。
この4つに分けると、関わり方を考えやすくなります。
「元気がない」だけでは、理由は一つに決まりません
会話が減った。
眠っている時間が増えた。
以前より疲れて見える。
こうした変化があっても、その理由まではまだ分かりません。
仕事で疲れているのかもしれない。
人間関係で気になることがあるのかもしれない。
体調がよくないのかもしれない。
睡眠不足なのかもしれない。
気分の落ち込みが続いているのかもしれない。
厚生労働省委託「こころの耳」でも、家族は本人の「いつもと違う様子」に気づきやすい一方、家族だけで抱えず、職場や専門家の支援を得ることも大切だと案内しています。こころの健康相談窓口
ここで大事なのは、
「元気がない=うつ病」
と決めることでも、
「疲れているだけ」
と片づけることでもありません。
まず、
以前と比べて、何が変わっているのか
を見ます。
声をかけるなら、「原因を聞く」より「気づいたことを伝える」
心配になると、
「どうしたの?」
「何があったの?」
と理由を聞きたくなります。
でも、本人自身にも理由が分からない場合があります。
また、話したくてもまだ言葉になっていないこともあります。
そんなときは、
「最近、少し疲れているように見えるけど、どう?」
「前より眠っている時間が長いみたいで、ちょっと気になってる」
のように、家族が気づいた変化を伝えるところから始める方法があります。
「こころの耳」も、いつもと違う様子に気づいた場合、否定せず本人の話に耳を傾け、話したがらないときには無理に聞き出さず、「話したくなったら」という姿勢で見守ることを勧めています。こころネット
つまり、
話してもらうことをゴールにしなくてよい
ということです。
「今は話したくない」
という本人の選択もあります。
「励ますか、そっとするか」の二択にしない
家族への接し方を調べると、
「励ましてはいけない」
という言葉を目にすることがあります。
ただし、すべての「元気がない人」に対して、励ますことが一律に悪いという意味ではありません。
特に、うつ病などで心のエネルギーが大きく低下している状態では、無理な励ましや気分転換への誘いが、かえって本人の負担になる場合があります。厚生労働省の家族向け情報でも、うつ病の人を無理に外出や気晴らしへ誘わないことや、励ましについては状態や時期を踏まえる必要があるとされています。厚生労働省
だから、
励ます/何もしない
の二択ではなく、
「今日はそばにいる」
「話したくなったら聞く」
「食事だけ声をかける」
「必要なことがあるか聞く」
「今は一人で過ごしたいか確認する」
など、その人の状態に合わせた関わり方があります。
「支える」と「元気にさせる」を分ける
家族がしんどそうだと、
「自分が何とかしなければ」
と感じる人もいます。
でも、
支えることと、
本人の状態を家族が変えること
は同じではありません。
家族にできるのは、
話を聞く。
生活の中で負担になっていることを一緒に考える。
必要なら受診や相談について情報を探す。
本人が希望すれば付き添う。
といったことです。
一方で、
必ず元気にする。
原因を特定する。
治療する。
本人に代わって人生の判断をする。
ところまで家族が担う必要はありません。
厚生労働省の情報でも、家族が一人ですべてを抱え込まず、複数の人や専門家と協力すること、そして支える家族自身も休息を取ることが勧められています。厚生労働省
今回の小さな整理:「支える」と「背負う」
家族のことが気になったとき、次のように分けてみます。
支える
「最近どう?」と声をかける。
話したいときに聞く。
相談先の情報を一緒に探す。
できる範囲で生活を手伝う。
背負う
本人が元気になるまで自分も休めない。
何を考えているか全部把握しようとする。
本人の代わりにすべての判断をする。
「自分が支えなければ、この人はダメになる」と一人で抱える。
境界はいつも明確ではありません。
その日の状態や関係によっても変わります。
だから、
「私は今、支えている? それとも、全部を背負おうとしている?」
と確認するだけでも構いません。
相談を勧めるときも、本人の主語を残す
家族から見ると、
「一度病院へ行った方がいいのでは」
と思う状態もあります。
でも、
「病院に行きなさい」
と一方的に決めるだけでは、本人が受け取りにくい場合があります。
まず、
「最近眠れてる?」
「仕事へ行くのがかなりしんどそうに見えるけど、どう?」
と状態を確認したうえで、
「一度相談してみる方法もあると思うけど、どうかな」
と選択肢として伝える方法があります。
本人が相談することにハードルを感じている場合は、家族自身が先に専門機関へ相談することも選択肢です。「こころの耳」も、本人が相談しにくい場合には家族が相談してみる方法を案内しています。こころネット
9/30のコラムで整理したように、
精神科・心療内科。
カウンセリング。
公的相談。
など、相談先にもそれぞれ役割があります。
相談先を決めてから相談しなくても構いません。
どこへ相談すればよいか自体を、相談してよいのです。
こんな変化が続いているときは、専門家への相談も考える
「元気がない」だけで病名は判断できません。
ただ、
睡眠が大きく変わった。
食欲がかなり変わった。
仕事や学校へ行けなくなった。
強い疲労が続いている。
以前楽しめていたことをほとんど楽しめなくなった。
など、心身や生活への影響が続いている場合は、医療機関や相談機関へつながることも考えます。
また本人が、
「消えたい」
「死にたい」
など、自分の命を絶つことをほのめかす場合は、単に励ましたり話題をそらしたりせず、その言葉を受け止め、治療中であれば主治医へ連絡するなど、安全を優先した対応が必要です。厚生労働省も、そのような言葉を無視しないよう案内しています。厚生労働省
家族が元気でいることも、支えることの一部です
家族がしんどそうな状態が続くと、
本人の睡眠。
食事。
仕事。
受診。
表情。
一日中気になってしまう人もいます。
そして気づけば、自分自身の予定や休息を後回しにしている。
でも、家族を支えることは、
家族自身の生活をなくすことではありません。
「こころの耳」では、家族との間でも物理的・心理的に適度な距離を取ることが、よい関係と安定した気持ちを保つためのサポートになり得るとしています。こころの健康相談室
少し外出する。
自分の予定を続ける。
別の家族や専門家にも相談する。
一人になる時間を取る。
そうしたことも、本人を見捨てることとは違います。
「何を言えば正解?」より先に
家族が元気をなくしていると、
「どんな言葉をかければいい?」
という問いが大きくなります。
でも、いつでも効く一つの言葉はありません。
まず、
何が変わっている?
と見る。
そして、
本人は今、話したい?
そっとしてほしい?
何か手伝ってほしい?
を確かめる。
必要なら、相談先を一緒に探す。
そして、
家族だけで全部を何とかしようとしない。
支える人にも生活があります。
本人を支えることと、家族自身を守ること。
その両方を残しながら関わることができます。

