
夫・妻に何度言っても伝わらないのはなぜ?
「分かってくれない」の前に確認したいこと
「それ、前にも話したよね」
家事のこと。
子どものこと。
お金のこと。
休日の過ごし方。
何度話しても、また同じことが起きる。
相手は、
「分かった」
と言ったはずなのに、行動は変わらない。
そんなことが続くと、
「何回言えば分かるの?」
「私の話を聞く気がないのかな」
「私のことを大切に思っていたら、普通は分かるよね」
と感じる人もいます。
逆に、言われる側も、
「また怒られる」
「何を答えても正解にならない」
「自分なりにはやっているのに」
と感じているかもしれません。
先に全体像をお伝えすると、
夫婦で何度話しても伝わらないとき、問題は“伝え方”だけとは限りません。
同じ言葉を使っていても、
何を問題だと思っているのか。
何を分かってほしいのか。
何をしてほしいのか。
そもそも、どこまで同じ考えになる必要があるのか。
ここがずれている場合があります。
まず、
「分かってほしい」ことと、
「同じように考えてほしい」ことを分けてみる。
そこから始めます。
「伝えた」と「同じ意味で受け取った」は違います
たとえば、
「もう少し家のことをやってほしい」
と伝えたとします。
言った側は、
「私の負担に気づいて、自分から動いてほしい」
という意味だったかもしれません。
一方、聞いた側は、
「頼まれた家事をやればいい」
と受け取ったかもしれません。
すると、
食器を洗った夫・妻は、
「ちゃんとやった」
と思う。
頼んだ側は、
「言われたことしかやらない」
と感じる。
同じ会話をしていても、二人が受け取っていた内容は違います。
これは、
どちらかが嘘をついている。
どちらかに思いやりがない。
とすぐに決める話ではありません。
まず、
言った言葉と
相手が受け取った意味
は、同じとは限らない。
そこを確認する必要があります。
「分かってほしい」の中身を、小さくしてみる
「分かってほしい」という言葉には、いくつもの意味が含まれます。
気持ちを理解してほしい。
大変さを知ってほしい。
謝ってほしい。
行動を変えてほしい。
次から自分で気づいてほしい。
自分と同じ価値観を持ってほしい。
これらは、少しずつ違います。
たとえば、
「今日は本当に疲れた」
と言ったとき。
話を聞いてほしいのか。
家事を代わってほしいのか。
「大変だったね」と言ってほしいのか。
今日は一人で休みたいのか。
本人の中でも整理されていないことがあります。
だから、
「こんなに言っているのに分からない」
となったときは、
私は、相手に何を分かってほしいのだろう?
と一段小さくする方法があります。
完全には、分かり合えない
夫婦だから。
長く一緒にいるから。
家族だから。
「これくらい分かってくれるはず」
と思うことがあります。
でも、同じ出来事を見ても、
何を大事だと思うか。
何が負担になるか。
どこまで気になるか。
どうしてほしいか。
は、同じとは限りません。
完全には、分かり合えない。
これは、
「どうせ分かり合えないから諦めよう」
という意味ではありません。
むしろ逆です。
完全には分からないからこそ、
相手の気持ちを、自分の想像だけで決めない。
「きっとこう思っている」
「普通ならこうする」
「分かっているはず」
と決める代わりに、
聞く余地を残します。
国の「トモイクシート」でも、夫婦・パートナーが家事や育児について、それぞれの考えや負担を見える形にし、対話しながら「自分たちにとっての協力体制」をつくる方法が示されています。相手の話を遮らず、まず受け止めることも対話のポイントとして案内されています。共育(トモイク)プロジェクト
決めつけずに聞く。でも、自分の本音も消さない
「相手を尊重する」と聞くと、
相手の話を全部受け入れる。
自分が我慢する。
という意味に感じる人もいます。
でも、それも少し違います。
相手の話を聞くことと、
自分の希望を諦めることは同じではありません。
たとえば、
「あなたは何もしてくれない」
ではなく、
「夕食のあと、片づけまで自分が続けているとかなり疲れる。週に何日はお願いしたい」
と、自分が困っていることや希望を具体的に言葉にする。
相手を決めつけずに聞くことと、自分の本音を伝えることは両立します。
内閣府も、夫婦がそれぞれの暮らし方や気持ちを言葉にして共有し、家事・育児の分担を確認するための対話ツールを公開しています。男女共同参画局
「お願い」と「相手を動かすこと」を分ける
ここは、夫婦関係で混ざりやすいところです。
希望を伝える。
お願いする。
話し合う。
そこまでは、自分にできます。
でも、
相手が必ず納得する。
自分と同じ価値観になる。
こちらが望む通りに行動する。
ところまでは、自分だけでは決められません。
自分の希望を伝えることと、相手の選択をコントロールすることは別です。
これは、
「相手が嫌だと言ったら全部諦める」
という意味でもありません。
断られたら、
なぜ難しいのか聞く。
別の方法を探す。
条件を変える。
役割を見直す。
それでも自分には受け入れられないなら、
自分はこの関係で何を選ぶか
を考える。
相手の選択を奪わないことと、自分の選択を諦めることは同じではありません。
発達特性が関係することもあります。でも、それだけで決めない
何度言っても伝わらない状態について調べると、
「ASD」
「ADHD」
「カサンドラ」
という言葉に出会うことがあります。
実際に、
曖昧な表現を読み取りにくい。
複数のことを一度に扱いにくい。
相手が暗黙に期待していることに気づきにくい。
言われた内容を覚えておくことが負担になる。
など、発達特性が夫婦間のすれ違いに影響する場合はあります。
ただ、
夫・妻に何度言っても伝わらないという一場面だけで、相手の発達障害を判断することはできません。
疲労。
仕事。
家事・育児の負担。
過去の関係。
価値観。
話すタイミング。
伝える内容の具体性。
なども関係します。
最近の検索結果には、夫婦の「伝わらなさ」を発達特性やカサンドラの文脈で説明する記事も多くあります。一般社団法人 人間力認定協会
ここのばでは、診断名を先に置くより、
この二人の間で、どこから情報がずれているのか
を見ます。
今回の小さな整理:「事実・希望・相手の選択」
話し合いが噛み合わなくなったときは、三つに分けてみます。
事実
何が起きた?
例:
「今週、夕食後の片づけを5日とも自分がした」
自分の希望
本当はどうしてほしい?
例:
「週に2日は片づけをお願いしたい」
相手の選択
相手はどう考えている?
ここは、聞いてみなければ分かりません。
この三つを混ぜると、
「いつも私ばかり」
「あなたは家族のことを考えていない」
という、相手自身への評価へ広がりやすくなります。
一方、
何が起きたか。
自分は何を望んでいるか。
相手はどう考えているか。
を分けると、話し合う対象が少し具体的になります。
「理解したなら変わるはず」とは限りません
もう一つ、大事なことがあります。
相手がこちらの気持ちを理解したとしても、
必ずこちらの希望どおり行動するとは限りません。
「大変なのは分かった。でも今は仕事の都合で毎日は難しい」
ということもあります。
ここで、
「変わらない=理解していない」
と決めると、また同じ話を繰り返すことになります。
理解。
同意。
行動。
この三つも、同じではありません。
完全には分かり合えない。
だからこそ、
分かったつもりで終わらず、何に同意できて、何は難しいのかまで確認する。
その方が、二人の違いを扱いやすくなります。
伝え方だけで解決しない関係もあります
一方で、
何を言っても怒鳴られる。
怖くて意見を言えない。
無視や侮辱が繰り返される。
行動や交友関係を強く制限される。
などがある場合は、
「上手に伝えれば分かってもらえる」
というコミュニケーション技術の問題だけにしない方がよいでしょう。
配偶者やパートナーからの暴力・威圧については、内閣府のDV相談ナビ(#8008)など専門の相談先があります。男女共同参画局
安全が関わる状態では、相手との話し合いより先に、外部へ相談することも選択肢です。
分かり合うことより、「確かめ合える関係」へ
夫・妻に何度言っても伝わらないと、
「この人には私のことが分からない」
という結論にたどり着きたくなることがあります。
でも、人はそもそも、相手の内側を完全には知ることができません。
だから、
完全には、分かり合えない。
だから、決めつけずに聞く。
だから、自分の本音を言葉にする。
だから、相手の選択まで奪わない。
そして、相手にも同じように、自分を尊重してもらう。
目指すのは、
何も言わなくても分かり合える夫婦
ではなく、
分からないときに、確かめられる関係
なのかもしれません。
「分かってくれない」
と感じたときは、
まず、
私は何を分かってほしい?
そして、
相手は、どう受け取っている?
ここから聞き直すことができます。

