
会議で話が頭に入らないとき
「集中力がない」で終わらせる前に整理したいこと
月曜日の夕方。
会議が終わって席に戻ったあと、
「結局、何が決まったんだっけ」
と資料を見返す。
話している最中は、ちゃんと聞いていたつもりだった。
メモも取っていた。
それなのに、
自分が何を担当するのか。
いつまでに何をするのか。
途中で出てきた話が、何とつながっていたのか。
うまく思い出せない。
そんな経験が続くと、
「自分は集中力がないのかな」
「話をちゃんと聞けない自分が悪いのかな」
と、自分自身の問題として考える人もいます。
発達特性について調べたことがある人なら、
「もしかしてADHDなのかな」
と考えることもあるかもしれません。
でも、「会議で話が頭に入らない」という一場面だけでは、何が起きているのかはまだ分かりません。
診断名を考える前に、まずその場で何をしているのかを分けてみます。
会議では、「聞く」だけをしているわけではありません
会議に参加しているとき、実際にはいくつものことを同時に扱っています。
相手の話を聞く。
内容を理解する。
前に出た話とつなげる。
必要な部分をメモする。
自分に関係する話か判断する。
発言するタイミングを考える。
画面や資料を見る。
周囲の反応も確認する。
「座って話を聞く」という一つの行動に見えても、中では複数の処理が重なっています。
だから、
「話が入ってこない=集中しようとしていない」
とは限りません。
たとえば、
話す人が次々と変わる。
議題が途中で切り替わる。
口頭説明だけで進む。
資料と話している内容が一致していない。
メモを取っている間にも話が先へ進む。
といった条件では、情報を整理しにくくなる人もいます。
ここでは、
「もっと集中する」
より先に、
どの場面から分からなくなるのか
を見てみます。
「聞けなかった」の中身を分けてみる
同じ「会議が頭に入らない」でも、起きていることは違います。
話の途中で別のことが気になる
一つの言葉から別の考えが浮かび、その間に話が先へ進んでいる。
メモを取ると、聞く方が抜ける
書くことへ意識を向けている間に、次の説明が入ってこなくなる。
一つひとつは分かるけれど、全体がつながらない
会議が終わると、「結局どうなった?」が分からない。
自分に関係する部分が分からない
話は理解していても、自分が次に何をすればよいか曖昧なままになる。
長くなるほど内容が残らない
前半は分かっていたのに、後半になるほど追いにくくなる。
このように分けてみると、
「自分は会議が苦手」
という大きな問題から、
「どこで情報が抜けやすいのか」
という、もう少し扱いやすい問いに変わります。
発達特性は一つの見方。でも、それだけで決めない
注意欠如・多動症(ADHD)では、注意を持続しにくいことなどが特性として挙げられています。政府広報でも、集中のしにくさ、忘れ物、仕事や約束を忘れること、タスク管理の難しさなどが社会生活上の困りごとの例として紹介されています。
厚生労働省も、発達障害の特性や程度は一人ひとり異なると説明しています。
だから、
「会議で集中できない」
という一場面だけを見て、
「ADHDだ」
と判断するものではありません。
疲れている。
睡眠が足りていない。
会議が長い。
内容が専門的で分かりにくい。
複数人が同時に話す。
資料がない。
会議の目的が分からない。
仕事上の緊張が強い。
など、発達特性以外の条件も考えられます。
見るべきなのは、
「本人に何が足りない?」だけではなく、
「どんな条件なら理解しやすい?」
ということです。
「全部聞き取る」から「必要なものを拾う」へ
会議中、
「一言も聞き漏らさないようにしよう」
「全部メモしよう」
とすると、聞くことと書くことの両方が忙しくなる人もいます。
そんな場合、
会議で拾う情報をあらかじめ絞る方法があります。
たとえば、
① 何が決まった?
② 自分は何をする?
③ いつまで?
この3つを中心にメモする。
それ以外は、必要に応じて資料や議事録で確認する。
会議によっては、
事前に議題を確認する。
資料を先にもらう。
途中で分からなくなった点に印を付ける。
会議後に確認する。
といった方法も考えられます。
目的は、
「会議を完璧に聞ける人になること」ではありません。
自分が仕事を進めるために必要な情報を、受け取りやすい方法へ変えることです。
自分の工夫だけでなく、会議の条件も見てみる
本人が工夫できることもあります。
でも、会議の分かりにくさまで全部本人が背負う必要はありません。
たとえば、
話すだけで終わらず、決定事項を文字でも共有する。
議題を事前に示す。
指示を具体的にする。
急な変更はできるだけ早く知らせる。
といった工夫で働きやすくなる人もいます。
厚生労働省の発達障害者への職場配慮事例でも、予定変更を早めに伝えることなど、本人の特性と職場の状況を踏まえて調整する考え方が紹介されています。配慮は一律ではなく、本人と話し合いながら考えることが前提です。
つまり、
本人の努力か、職場の配慮か
という二択ではありません。
本人が試せる方法と、
環境側で変えられる条件。
その両方を見ることができます。
診断がなくても、「困っていること」は整理できます
「発達障害の診断がないから、相談するほどではない」
と考える人もいるかもしれません。
ただ、相談の入口は必ずしも病名ではありません。
名古屋市発達障害者支援センターでは、
「重ねて指示されると混乱する」
「仕事が遅く、注意されることが多い」
「別のことへ気が散ると、前の作業がそのままになる」
といった、具体的な生活・仕事上の困りごとについて本人・家族・支援者・雇用関係者などから相談を受けています。また、同センター自体は診断・検査を行う場所ではないことも明記されています。
つまり、
「発達障害かどうか」を決めてから困りごとを整理する
必要はありません。
まず、
何に困っているのか。
どの場面なら起きるのか。
どんな条件では起きにくいのか。
そこから整理できます。
会議が終わったあと、一つだけ確認するなら
もし今日の会議で、
「また話が頭に入らなかった」
と感じたなら、
「もっと集中しなければ」
だけで終わらせず、
「どの場面から、何が難しくなった?」
と見てみます。
話を聞くこと。
メモすること。
話のつながりを理解すること。
自分の担当を判断すること。
長い時間、注意を保つこと。
いくつかが重なっていたかもしれません。
そして、
自分で工夫できること。
会議の進め方を変えると楽になること。
誰かに確認した方がよいこと。
必要なら相談して整理すること。
を分けてみる。
会議で話が頭に入りにくいことと、
仕事をする人としての価値は、同じ話ではありません。
「ちゃんとできる人になる」だけではなく、
自分が理解しやすく、働きやすい条件は何か。
そこから考えることもできます。

